落語家。
大学卒業後、2年間のサラリーマン生活を経て、1988年に笑福亭鶴瓶師匠に入門。
2005年からJA共済 交通安全落語に取り組んでいる。
高座に上がった瓶太さんが小噺を始めると、会場はすぐに笑いに包まれる。
「落語は双方向」と語るように、地元の地名を織り交ぜ、参加者とのコミュニケーションを取り入れた小噺で会場を盛り上げていく。そして会場全体が一つになった頃、高齢者の交通安全啓発を目的とする、JA共済オリジナルの「交通安全落語」が始まった。
演目は「98歳のタクシー運転手」。日本最高齢を自負するタクシー運転手の運転にひやひやする乗客とのやりとりを演じた落語で、単に笑わせるだけではなく、交通安全のポイントを織り交ぜていく。
「笑った中にも、あの落語家が言ってたように、交通安全に気をつけようと思ってくれたらうれしいですね」と瓶太さんは語る。
「交通安全という真面目なテーマやから、ほんまにできるのかなぁって最初はちょっと不安やったんですよ」と瓶太さんは語る。
落語は本来、お客さんを笑わせるもの。大切なのは、“んなわけないだろ”という落ちだと瓶太さんは言う。98歳のタクシー運転手という演目について聞くと、「交通安全は現実だから、車が空を飛ぶとかテーマと外れすぎたら現実感がないし、お客さんがついてこない。リアルだけど、“んなわけないだろ” という落ちが大切なんです」と教えてくれた。
交通安全落語を始めて1年が経つ頃、「これはやっていけるな」という自信に変わったという瓶太さん。そして現在、「もうほとんど原型はない(笑)」と語るように、交通安全落語は時勢に合わせて変化を続けている。
落語を終えた後、参加者から声をかけてくれることも多いと瓶太さんは言う。
「会場から帰るときにね、お客さんに囲まれて、握手してたんですよ。また来るよーって言っても、ずっと手を握って離さない(笑)。うれしかったですよ」。
参加者の中には、普段なかなか落語を生で聴く機会が無いという方も多い。交通安全教室は、高齢者の方に落語を楽しんでいただくと同時に、交通安全の意識を高めていただく貴重な機会となっている。そうした交通安全への願いについて瓶太さんに聞いてみた。
「車社会で便利な世の中になったけど、悲しい事故は後を絶たないでしょう。だからこそ、参加してくれた方には、より交通安全を意識していただきたい。微力かもしれないけど、少しでも交通事故が減ることに貢献できているのであればうれしい」と瓶太さんは語る。
落語家になる前、大学を卒業後に2年間サラリーマンをしていたという瓶太さん。25歳のときに「人生は一回。好きなことで生きていきたい」と、中学生の頃から憧れていた笑福亭鶴瓶師匠に弟子入りした。“人を笑わせたい、喜ばせたい”という想いで、「一人でできるから」と落語家の道を選んだという。
「落語家には定年もないから、一生続けられる。この交通安全落語も一生続けていきますよ。呼んでくれたらね(笑)」と瓶太さんは語る。“人を笑わせたい、喜ばせたい”というずっと変わらない想いと、交通安全を少しでも伝えていけたらという想いを胸に、これからも続けていく。
※本記事の内容は2015年6月16日時点の取材内容を元にしたものです。